西原理恵子さんの、「パーマネント野ばら」という本を読みました。
高須先生がTwitterで西原さんのこの本を紹介していたので、
ついつい気になって買ってしまいました。
内容はマンガになっており、文庫本で小さくて軽い本です。
届いて早速読んで、なんだか、あぁー。。。となっていました。
が、今はちょっと気分が戻ってきたので感想をば。
パーマネント野ばらの感想
Amazonのパーマネント野ばら商品説明には、このように書かれております。
私の家は「パーマネント野ばら」。
山あいのハウス農家のおばあちゃん達の
パンチパーマを一手に引きうけます----。「どんな恋でも、ないよりましやんか----」。
娘を連れてふるさとの村に出戻ったなおこ。その母が営む、村にひとつのパー
マ屋さんは、女のザンゲ室。そこでは女たちが、恋にまつわる小さな嘘を日々告
白している。男に裏切られても、泣いて笑ってたくましく。おとなの女の恋心を
描く感動の物語。
舞台は田舎。思春期を共に過ごした女達が大人になってもお互いの恋について語り、
泣いて、励ましたり、見守ったり。
その様子だけ見ていると、あっけらかんとたくましい女性たち、のように思えます。
不思議な主人公
主人公の女性がいます。彼女は他の強烈な女性たちと比べると一番落ち着いていて、一番波が無くて、家業のパーマ屋さんで働きながら我が子を育てています。
「叙情的作品」と表紙の裏にも書かれているように、
冒頭からずっとこの女性の心理描写が入っています。答えがない、夢の中のような、考え事のような、不思議な世界に見えます。
絵の描き方もこの女性の目がどこを見ているのか分かりにくいようにも捉えられるし、
とにかく見ていて少し不安な気持ちになる主人公です。
出てくる登場人物は底抜けに明るいように見えるけど
主人公を取り巻く登場人物は30代~70代くらいでしょうか。
昔は色々あったよねーガハハーと豪快に笑っているのが似合いそうな、そして今でも色々ありそうな、強く逞しい女性たちです。
そんな登場人物はみな、男の事で色々抱えています。
結構な出来事も起こりますが、西原さんの絵のタッチのように表情が豊かで怒ったり、泣いたり、わめいたり。色々あっても、最後は女達で集まってガハハーと笑い話にしてしまうような、そんな人たち。
ひどい出来事があっても泣きながら笑い飛ばしている姿が、「たくましいな」と思う反面、
その明るさに救われないものを感じました。
どんなに豪快に笑っていても、やっぱり、傷ついている。なのにそんなに笑っているのがかえって切ない。
印象に残ったセリフ1・女の心は定期預金
女の心は定期預金。ガマンひとつ飲み込むたびに金振り込んで・・・
どこかで聞いたような聞かないようなセリフだけども、少し前の自分を思い出してどきっとしました。
あぁぁ、女の心というものは貯めて貯めて、表には出さずに貯めて・・・ほんとにそうだなぁ
と完全に自分を重ねてしまい、ある日急に満期になってしまったこのひろこちゃんなる登場人物が他人事とは思えませんでした。
女性の心は定期預金ですよ。男の人、できれば心に留めておいてください。
印象に残ったセリフ2・男ってなんやったっけ
男ってなんやったっけ。
そんなセリフを心から言えるほど私は男のことは分かっていませんが、男ってほんまになんなんでしょうか。私にもわかりません。
このシンプルかつ答えのでない質問が、ぐさーっと刺さりました。
印象に残ったセリフ3・歴代の男はぜんぶ大嫌い
主人公の親友が、愛猫が無くなった時に言ったセリフ。
「うちも、歴代の男はぜんぶ大嫌い」
この言葉だけでも十分びっくりしたのですが、その言葉を笑いながら言っていることに傷つきました(私が傷つく必要は無いのだけど)。
泣いているのに笑っている。笑う必要はないのに、笑ってる・・・なんか悲しくなる。
こういったシーンやセリフがさらっと結構出てくるのがこの本の印象です。
心がもやもやっとします。
誰でも多かれ少なかれ持ってる心の傷がしんどい
この本の登場人物たちは多かれ少なかれ、心に傷を持っていて、それ自体は生きていくうちにふいと付いてしまったような、誰でもなにかしら持っているような、そんな傷なのだけど
そんな傷と今現在の目の前の出来事とが、ぐにゃっと絡んでるような描写が多いです。
そのせいか(?)、なんだか必要以上に自分自身が入り込んでしまう感がありました。
特に主人公の描写は冒頭から最後までしっかり出てきて、それなのに謎が多いです。
謎が多いからあまり自分を重ねられないはずなのに、主人公のある種の狂気みたいなものがなんとなく読み物としてではなく、感じられるのがしんどい。
話の最後には、女は何があっても大丈夫、とか、前向きな感じで括られています。
色々あるけど、それでも生きてる、大丈夫。
そんなことが書かれてありますが、私の読後はとてもどよーんとしていました。
どんなことがあっても、何回泣いても、どれだけ傷ついても、大丈夫。
本来は「そうだな、人生いろいろあるだろうけど、大丈夫なんだ。」と素直に思えれば良いのだと思いますが、
どういうんでしょうかね、この感じは。
強すぎてツライというか、結局は脆くてツライというか、勝手に我が人生を交えて振り返って、「あぁ、私も笑いながら泣いてるんじゃ・・・」とかなんか恥ずかしいことを一人もんもんと考え込んでしまいました。
自分の状態によって読後感が全く変わってくる本じゃないでしょうか。
まとめ
だらだらと書いてしまったこの感想のように、
読後感はなんだか心がぼけーっとまとまりが無くなってしまいます。
せっかく買ったので手元に置いておいて、また年を取ったら読み返してみたいな、と思いますが、なんとなく今は読むのがしんどいです。
他人にオススメしますか?と聞かれると、うーん、と悩んでしまいそう。
とりあえず、ちょっと凹み気味だったりいろいろ思い悩んでしまうタイプの人にはおすすめしないかもしれません。
自分が笑いながら泣いてることに気が付いてないような表面元気っこタイプの人ならば、
一度読んでみることをおすすめします。